コラム 不動産 業界動向

不動産統計データを分析!経済危機下における不動産市況動向

投稿日:2020-05-29 更新日:

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除されましたが、感染拡大の第二波の懸念は引き続き残っており、状況によっては再度緊急事態宣言が発せられることや、外出の自粛を余儀なくされることも考えられます。

2020年の上半期は、新型コロナウイルスが世界中を席捲し、大都市からは人が消え、2万4,000円まで上昇していた日経平均も大幅に下落するなど、東京オリンピックを控えたムードは雲散霧消しました。

このコロナ禍によってさまざまな業界で影響が出ていますが、不動産業界・不動産取引にも大きな影響を及ぼしており、不動産価格や問い合わせ・成約数にも変化が出てきているようです。

そこで今回は、国交省・内閣府が発表している各種指標を検証し、過去の経済危機や災害時の動きを検証し、今後の不動産市況動向について考えてみたいと思います。

既存住宅販売量指数の推移

下のグラフは、国交省が発表した既存住宅販売量指数の推移(全国)です。

※既存住宅販売量指数とは?

・登記データを基に個人が購入した既存住宅の移転登記量を加工・指数化したもの。

・建物の売買を原因とした登記データのうち、個人取得の住宅で既存住宅取引ではないものを除外。

・別荘、セカンドハウス、投資用物件等を含む。

既存住宅販売量指数の推移を2008年以降でみると、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、2014年と2019年の消費税増税で既存住宅販売量の大幅な増減がみられます。

また2014年以降、アベノミクスの影響や新築分譲マンション価格の高止まりなどの影響もあって、中古一戸建て・中古マンションともに販売量が増加していることも特徴となっています。

今回はこのうち、2008年のリーマン・ショックと2011年の東日本大震災時の動向を振り返ってみたいと思います。

リーマンショック時の各指標の推移①「中古一戸建て/大阪府」

リーマンショック時の不動産関連指標の推移(中古一戸建て/大阪府)

ここからは、既存住宅販売量指数(国交省)に加え、不動産価格指数(国交省)、景気動向指数(内閣府)などの各種指標も併せてみていくことで、生活者のマインドと不動産関連指標の相関性についてみていきたいと思います。

リーマンショックまでの流れを簡単に振り返ると、2007年のアメリカの住宅バブル崩壊をきっかけに資産価格の暴落が起こり、大量に発生した不良債権によって投資銀行リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻したことに端を発して、連鎖的に世界規模の金融危機が発生しました。

2008年当時の大阪府の中古一戸建て市況をみると、2008年4月から価格・景況感ともに低下傾向にありましたが、2008年9月のリーマンブラザーズの破綻で住宅販売量がさらに下落します。2008年末から景況感指数は回復しますが、不動産価格、住宅販売量はほぼ横ばいで推移しています。

リーマンショック時の各指標の推移②「中古マンション/大阪府」

リーマンショック時の不動産関連指標の推移(中古マンション/大阪府)

中古マンションは、中古一戸建てとは異なり、既存住宅販売量指数と景気動向指数の間に相関性がみられることが特徴となっています。不動産価格はこの期間ほぼ横ばいとなっており、安定的に推移しています。

中古マンション市場は、リーマン・ショック後の数カ月~半年程度という比較的短い期間で回復に向かっています。さまざま背景が考えられますが、新築マンションの発売が滞る中で中古マンション市場に流れたことなどが要因の一つと言えそうです。

東日本大震災時の関連指標の推移①「中古一戸建て/大阪府」

東日本大震災時の不動産関連指標の推移(中古一戸建て/大阪府)

2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による災害と、津波の影響による東京電力福島第一原子力発電所で発生した炉心溶融(メルトダウン)など一連の放射性物質の放出を伴った事故が発生したことで不動産市況に大きな影響を与えました。

東日本大震災の発生で、景況感は前月比で半減(50→25)しました。不動産価格と既存住宅販売量は震災前後でみても、波はあるものの、ほぼ横ばいで推移しています。リーマンショック時と同様、中古一戸建て市場は中古マンションに比べて市況の変化を受けにくい傾向があると言えそうです。

東日本大震災時の関連指標の推移②「中古マンション/大阪府」

東日本大震災時の不動産関連指標の推移(マンション/大阪府)

中古マンションは、震災発生後に販売量が一気に減少し、一旦回復したもののその後はほぼ横ばいで推移しており、前年同月割れが続く展開となっています。一方、不動産価格はほとんど震災の影響を受けていません

中古マンションの売主は、そのほとんどが事業者ではなく個人であるため、市場動向とは関係なく各家庭や個人の内部要因によって一定の取引は発生します。物件数に大きな変化が出にくく、価格への影響も限定的となっている要因の一つとして考えられます。

<不動産市況分析のまとめ>

①直近約10年では、リーマンショック、東日本大震災、消費税増税(2回)の

 計4回で住宅販売量指数が大きく上下している。

②過去の金融危機や大規模災害においては、不動産価格はそれほど大きく

 上下していない。戸建てよりも特にマンションでその傾向が強い。

③過去の金融危機や大規模災害においては、景況感と住宅販売量に相関性

 がみられないケースの方が多い。特に戸建てはあまり景況感に影響を受

 けていない。

景気動向指数の上下は即時性が高く、不動産価格指数と既存住宅販売量指数は漸次性が高いことがそれぞれの特徴となっています。

これらを総合すると、一時的に不動産価格指数や既存住宅販売量指数が下落することはあっても長期的に低迷することは考えづらいと言えそうです。

なお、すでに発表されている景気動向指数の2020年3月度は14.2で、201812月の19.0を大幅に下回る過去最低値となりました。20201~3月期の不動産価格指数と住宅販売量指数は今後発表となりますが、引き続き注視していく必要があるでしょう。

経済危機下における不動産市況動向

ここまで、過去の経済・金融危機における景気動向指数と不動産価格指数、既存住宅販売量指数の推移を検証・分析し、いくつかの傾向を見出すことができました。ただしこれは、コロナ禍がいつ、どの程度で終息するかによって見方が変わってくるものと思われます。

短期的に終息すれば、たまっていた需要を吐き出して一気にV字回復するシナリオなども考えられますが、新型コロナウイルスの蔓延が止まらない、変種やさらなる新種が発生し、人が集まること自体がリスクであるといった状況が長期化することで、経済環境や雇用環境にじわじわとダメージを与える、来店や内見が滞るといったシナリオになれば、上述した限りではなくなるでしょう。

最後に、消費者目線で考えると、居住用物件は自身や家族のライフイベントに合わせて物件の売り買いを決めるのが大多数と言えます。従って、市場動向から受ける影響度合いは、投資用物件などに比べると小さく、コロナ禍によって不動産の検討を中止するケースは限定的と言えるでしょう。

コロナウイルス感染リスクや先行きがみえない経済状況に不安を抱えている消費者も多いことと思います。そういった消費者のニーズに沿う形で接客・サービスを行うことが重要だと言えそうです。

※各指標の説明

①既存住宅販売量指数(国交省)※2010 年平均=100

・建物の売買を原因とした所有権移転登記個数(登記データ)のうち、個人取得の住  宅で既存住宅取引ではないものを除いたものとする。
・なお、この中には総務省統計局が5年に1度実施している住宅・土地統計調査で把握可能な「既存住宅取引量」には含まれていない別荘、セカンドハウス、投資用物件等を含む。

②不動産価格指数(国交省)※2010 年平均=100

不動産価格指数は、不動産市場価格の動向を表すものとして、国土交通省が作成したもの。年間約30万件の不動産の取引価格情報をもとに、全国・ブロック別・都市圏別・都道府県別に不動産価格の動向を指数化した「不動産価格指数」を毎月公表しています。

③景気動向指数(内閣府)

景気動向指数は、生産、雇用など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって、 景気の現状把握及び将来予測に資するために作成された指標。なお、各経済部門から選ばれた指標の動きを統合して、 単一の指標によって景気を把握しようとするものであり、すべての経済指標を総合的に勘案して景気を捉えようとするものではないことに留意する必要がある。

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