新型コロナウイルス感染症の影響は、不動産事業者の事業運営や営業活動に大きな影響を与えています。4月・5月の緊急事態宣言時は、生活者が外出自粛を余儀なくされた結果、不動産店への来店・内見数が激減するという状況を生み出しました。
緊急事態宣言が解除されたことで、そういった事態は不動産事業者側の努力(除菌の徹底や三密の防止など)もあり、徐々に改善傾向にあるようですが、今後懸念されている感染第二波によって、また同様の事態が起こるという可能性も否定できません。
今回は、LIFULL HOME'Sが行った調査「新型コロナウイルス感染症の影響による生活者の住み替え行動に関する調査」から、エンドユーザーのコロナウイルス禍における住み替え行動を検証し、来たる感染第二波への不動産業者としての備えについて論考してみたいと思います。
目次
住み替え・建て替え検討者は25.1%(2020年4月時点)
Q1.あなたは住み替え・建て替えを検討していますか?(全体n=70,000、択一回答)
2020年3月 している:23% していない:77%
2020年4月 している:25.1% していない:74.9%
現時点での住み替え・建て替え意向について調査を実施したところ「検討している」が25.1%で3月1日時点の23.0%と比べ、微増という結果になっています。
検討者の51.8%が「具体的な検討行動はしていない」と回答
Q2.住み替え・建て替えを検討している人に伺います。検討状況はどのような段階ですか?(全体n=17,555、択一回答)
2020年3月 具体的な検討はしていなかった:37.1%
情報収集を始めていた:27.2%
不動産会社とのコミュニケーション(内見など)をしていた:11.4%
契約直前であった:4.0%
成約した:20.4%
2020年4月 具体的な検討はしていなかった:51.8%
情報収集を始めていた:21.8%
不動産会社とのコミュニケーション(内見など)をしていた:9.3%
契約直前であった:2.9%
成約した:14.2%
Q1の設問で、現在検討していると回答した方の51.8%が「具体的な検討行動はしていない」と回答しています。3月の調査結果の37.1%と比較すると約1.5倍となっています。新型コロナウイルスによる感染リスクや先行きが見えない経済情勢などが決断を鈍らせているようです。
住み替え・建て替えを「どうしたらいいかわからない」「延期」が71.3%
Q3.住み替え・建て替えを検討している人に伺います。住み替え・建て替えの今後の見通しはどのようにお考えでしょうか?(全体n=16,810、択一回答)
予定通り住み替え・建て替えを行うつもりでいる:21.7%
住み替え・建て替えを延期する/延期した(後に再検討するつもり):33.9%
住み替え/建て替えを中止する/中止した:6.7%
どうしたらいいか分からない・決めていない:37.3%
その他:0.4%
「住み替え・建て替えを検討している・していた」と回答した方に今後の見通しを聞いたところ、「予定通り住み替え・建て替えを行うつもりでいる」は21.7%となりました。延期して後に再検討が33.9%、分からない・決めていないが37.3%で最多となっています。
一方、中止する・中止したと回答した人は6.7%にとどまっています。前回の記事「不動産統計データを分析!経済危機下における不動産市況動向」でもご紹介しましたが、エンドユーザーは、自身や家族のライフイベント(結婚・出産・子どもの巣立ち)をきっかけに住み替えを検討するケースが大半となっているため、市場動向の影響度合いが限定的であることは今回の結果からもわかります。
住み替え・建て替えを中止した人は6.7%にとどまる
Q4.住み替え・建て替えを中止する/した理由は何ですか?(上位5項目、全体n=1,131、複数回答)
新型コロナウイルス感染症による将来の収入の不安:34.9%
新型コロナウイルス感染症による現在の金銭面の変化(退職、減収など):28.7%
新型コロナウイルス感染症による意識の変化(外出の不安など):28.5%
新型コロナウイルス感染症による生活の変化(在宅勤務・休校など):23.3%
新型コロナウイルス感染症によるライフイベント(結婚・転勤・転職など)の延期:15.0%
「住み替え・建て替えを中止する/した」と回答した方(6.7%)に、その理由を聞いたところ、新型コロナウイルス感染症を理由とした「将来の収入の不安」(34.9%)、「現在の金銭面の変化(退職・減収など)」(28.7%)、「意識の変化(外出の不安など)」(28.5%)などが上位を占めており、全体の85.3%が新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけとしたものとなりました。
「新型コロナの影響で不動産会社への訪問を控えた」20.4%
Q5.住み替えや建て替えを検討している中で、新型コロナウイルス感染症の影響により困ったことやご自身が行ったことはありますか?(上位3項目、全体n=20,016、複数回答)
第1位: 新型コロナウイルス感染症の影響によるご自身の不安により不動産会社の訪問を控えた:20.4%
第2位: 新型コロナウイルス感染症の影響によるご自身の不安による内見のキャンセル(13.1%)
第3位: 新型コロナウイルス感染症の影響により、モデルハウスや住まいの展示場が中止になった(10.6%)
「住み替え・建て替えを検討している/検討していた」と回答した方に、新型コロナウイルス感染症の影響により困ったことやご自身が行ったことについて聞いたところ、「新型コロナウイルス感染症の影響によるご自身の不安により不動産会社への訪問を控えた」が20.4%で最多となり、同じく「自身の不安により内見(物件見学)をキャンセルした」「モデルハウス・住まいの展示場が中止になった」が続いています。
住み替え・建て替えを延期した方の4割、中止した方の3割がオンラインでの対応に期待
Q6.住み替え・建て替えを延期・中止する/した方に伺います。不動産会社のやりとりから内見・重要事項説明・契約まですべてオンラインで対応してくれる不動産会社があれば、住まい探しを続けたと思いますか?(延期する/した全体n=200、中止する/した全体n=100単一回答)
<延期する/延期した>
続けたと思う:10%
多分続けたと思う:33%
わからない:38%
多分続けなかったと思う:11%
続けなかったと思う:8%
<中止する/中止した>
続けたと思う:9%
多分続けたと思う:25%
わからない:39%
多分続けなかったと思う:18%
続けなかったと思う:9%
「住み替え・建て替えを延期・中止する/した」と回答した方に、不動産会社とのやり取りから内見・重要事項説明・契約まですべてオンラインで対応の不動産会社があれば住まい探しを続けたかを聞いたところ、「延期」した方のうち43.0%、「中止」と回答した方の34.0%が住まい探しを続けたと回答しました。
上記調査では、新型コロナウイルス感染症の影響による「外出の不安」「不動産会社への訪問への不安」が一定数の回答を占めていたように、エンドユーザーの心理的不安感が来店・内見・成約減につながっていると言えるでしょう。
元々紙でやりとりをし、都度印鑑が必要な不動産の契約行為に対して、手間が多い・時間がかかるなどの意見がありましたが、コロナ禍によるニューノーマルの出現で、オンライン・非対面接客が一気に進んでいる状況です。また、生活者向けのサービスだけでなく、社内の業務も効率化を目的としたIT化が進み始めています。
ウィズ・アフターコロナにおいて、不動産仲介業者が生活者に提供できる価値とは?
不動産流通機構(レインズ)の調査によれば、2020年4月の中古マンションの成約数は、大阪府が-41.7%、京都府が-34.2%、兵庫県が-41.3%、中古戸建ては大阪府が-29.0%、京都府が-21.7%、兵庫県が-29.5%となっています。これらの数字は、統計開始以来最大の下げ幅だったとのことです。
5月に入って各エリアともに回復基調にあるものの、緊急事態宣言の発令による外出自粛の影響が数字となって如実に表れています。今後第2波到来が予測されていることに加え、先行き不透明な経済情勢に不動産市況(特に不動産価格)も左右される状況が続くことが予想されます。
コロナとの共存がウィズコロナ・アフターコロナのスタンダードとなることも踏まえると、
生活者のさまざまな不安を取り除いた、安全安心な住まい探しをできる環境を用意することの重要性が今後さらに高まっていくと考えられます。
物件の訴求・問合せなどはオンライン・非対面で行える形を整備していくことが選ばれる不動産会社になるための重要なポイントの一つになったと言えるでしょう。
■調査概要
実施期間:2020年4月17日 ~ 2020年4月21日
調査地域:全国
調査対象:17~49歳男女
回答件数:70,000件
調査方法:インターネット調査
分析:株式会社LIFULL