コラム 法務 経営支援

ビジネスで役立つ契約書作成の基本

投稿日:2020-07-18 更新日:

企業法務スキルのうち、契約書作成に関するものは最も活用頻度が多いものです。基本的な理解を押さえておくだけでも、実務ですぐに役立つでしょう。

 

契約書作成の目的

そもそも「契約」とは当事者の合意によって成立するものであり、合意方法までは法規にありません。したがって口約束を行っても成立しますが、万一その後に商品の瑕疵や債務不履行等のトラブルがあったとき、書面がなければ当初の合意条件を証明できず、解決できなくなります。

また、ビジネスでの契約では合意条件が複雑化することが多く、正しく内容を履行するには合意内容の振り返りが出来る”マニュアル”的な資料が必要です。

以上の点から、契約書作成の目的は以下のように要約できます。

 

【契約書作成の目的】

  1. 契約(取引)を成立させる
  2. 取引開始後のトラブルを防ぐ
  3. 双方の義務を確認する”マニュアル”として活用する
  4. トラブル発生時に備えて立証可能な手段を作る

 

契約書の構成&必須事項

契約書に盛り込むべき内容

契約書の構成や文面も法令で定められているわけではないものの、最低限必要な記載事項があります。

各事項については、タイトルから構成順に詳しく解説します。

 

タイトル

ひとくちに契約と言っても、その種類は様々です。

ビジネスで用いられる契約書の種類(下記)を念頭に置き、取引に合致する適切なタイトルをつけましょう。

 

【契約書の種類①】譲渡・売買に関するもの

●取引基本契約書

…継続的な売買等の取引を前提として、基本的な条件を定めるもの

●売買契約書

…物品(不動産・動産・知的財産権など)の売買条件を定めるもの

●供給契約書

…継続的に物品の売買を行う際、その基本的な条件を定めるもの

【契約書の種類②】委託・請負に関するもの

●業務委託契約書

…自社に必要な業務を外注するためのもの

●工事請負契約書

…工事業者―施主間あるいは元請―下請とのあいだで、建設工事の完成を目指して条件を定めるもの

●システム開発委託契約書

…利用者のためのシステム開発を目的とし、その条件を定めるもの

【契約書の種類③】機密・知的財産権に関するもの

●秘密保持契約

…取引や業務上知り得た秘密について、目的に沿わない使用を禁じるもの

●ライセンス契約書

…知的財産権の利用について、諸条件を定めるもの

 

当事者の表示

タイトルの次は「誰と誰が合意したのか」が分かるよう、契約に関わる当事者について表示しなければなりません。さらに、本文で各人の名称を記述しやすくなるよう、それぞれ「甲」「乙」「丙」に置き換えます。

 

【当事者の表示方法】

個人の場合:氏名+住所

法人の場合:本店所在地+商号+代表者氏名

 

前文

「○○の売買」など、契約目的の概要を記述します。記載は必ずしも要しませんが、内容を読まなくても何の契約書なのか判別できるようにする効果があります。

 

本文

述べるまでもなく、本文は契約書作成の目的を果たす上で最も重要です。条項(第1条・第2条…)に分け、下記の各内容を記述します。

 

●目的・債務履行の条件

まずは「○○という商品を甲から乙に売買する」等、契約目的について記述します。この際「誰が誰に対して・どんな義務を負うのか」を明確にしなければなりません。

続けて、商品代金・リース料・利率など、契約目的を達成するための条件について記述します。

●債務履行の方法

債務(契約において当事者の一方がもう一方に対して負う義務)の期日や方法について記述します。

●債務不履行時の定め

期限の利益喪失の条件(=債務を即時かつ一括で履行しなければなくなる条件)や、遅延損害金・違約金について定めます。

 

後文

契約内容の列記が終わったら「上記の通り合意した」旨を記載し、契約書の作成部数と「各部を契約当事者それぞれが保管している旨」を記載します。

 

作成日・署名

作成した日を明確にし、契約当事者が署名捺印します。不動産目録などの別紙添付の際は、その旨を記述します。

 

契約書に記載できない条項

任意規定と強行法規

民法の基本原則通り、契約内容は当事者が合意できる範囲なら自由です(=契約自由の原則)。しかし、まったく無制限ではありません。

書面作成時は自社にとって不利益にならない文面とするのが当然ですが、公序良俗に反する内容や、契約相手を一方的に弱い立場とするような内容は、記載しても効力を持ちません。

ビジネスの相手と公平かつ信頼できる関係を結ぶにあたって、ここで述べる内容は最も重要です。

 

任意規定と強行法規

契約によって生ずる権利義務を定める法律には、当事者の合意(=契約書の内容)よりも優先される「強行法規」、反対に合意内容のほうが優先される「任意規定」の2種類が存在します。

契約書に記載できない(記載しても無効になる)内容とは。前者の「強行法規」に抵触する条項です。

 

任意規定

当事者の合意が尊重され、必ずしも遵守しなくてよい法規です。

任意規定の代表格は「代金(報酬)の支払い期日」です。民法第633条では”仕事の目的物の引渡しと同時”だと規定されていますが、実務では前払い・後払い・毎月指定日払いなど自由に決められます。他にも、成果物が契約目的を達成できていない場合に問える「契約不適合責任」(改正前民法では”瑕疵担保責任”)が挙げられます。

 

強行法規

公序良俗や弱者の利益保護の観点で定められており、当事者の合意有無にかかわらず遵守しなくてはならないとされる法規です。

一例として「契約不適合責任」の免責条項を契約時に設けることは、事業者と消費者間の取引(消費者契約法第8条第1項)・業者を売主とする不動産取引(宅地建物取引業法第40条)のそれぞれで認められていません。

他にも、時効の利益をあらかじめ債務者に放棄させる(民法第146条)、秘密保持期間を無期限とする(民法第90条)、製造・加工・輸入などを行う業者の損害賠償責任を免じる(製造責任法第3条)等、強行規定が効力が認めない合意内容には様々なものがあります。

 

契約書作成のポイント

契約書作成のポイント

契約書作成の第一のポイントは「読む人による”意味のブレ”をなくす」ことです。契約当事者だけでなく、司法関係者を含む第三の立場の人物が読んでも、正しく明確に内容がつかめるものにしなければなりません。

企業規模によるものの、出来上がった契約書をレビューできる体制を整えることも大切です。特に少数精鋭化している企業では、各員が基本的な法律知識の獲得に取り組むべきでしょう。

 

おわりに

契約書作成に関するスキルは、業務円滑化とトラブル回避の第一歩です。初学者ほど構成と語彙に気を取られがちですが、実務では任意規定・強行法規への理解こそ重要です。強行法規のなかには「業種特有のもの」もあることに注意しましょう。

最後に、資格取得を兼ねて契約書作成スキルを深めるなら「ビジネス実務法務検定」の2級または3級の学習がおすすめです。

業務最適化やリスク対策の見直しをする上での参考としてみてください。

 

 

 

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