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不動産仲介ビジネスから考える【生産緑地の2022年問題】の要点

投稿日:2020-09-29 更新日:

生産緑地に関する2022年問題が不動産および関連業界で取り沙汰されるようになってから数年が経過しました。

生産緑地が宅地として市場に大量供給されることで市場のバランスに変化をきたすのではないかと懸念されているこの問題ですが、さまざまな情報が錯綜している状況となっています。

当記事では、不動産仲介ビジネスにおけるポイントの把握と今後の展望に関する理解が進むよう、背景と現状についてまとめました。

生産緑地の2022年問題とは何か?

生産緑地および2022年問題については、すでにご存知の方も多いかと思いますので、ここでは概要をご説明いたします。

「生産緑地」の定義と優遇措置

市街化地域内において、地方自治体が指定する農地として保全された土地を指します。

農地の持つ緑地としての機能を活かし、都市の環境保全を目的に設けられた制度です。

1992年の生産緑地法の法改正によって生産緑地に指定された土地は、農地として使い続けることを前提に固定資産税が低く抑えられるなどの優遇措置が適用されました。

生産緑地の指定を受けると、農地以外に使用することはできません。

生産緑地を規定する「生産緑地法」とは?

1992年に法改正が行われ、市街化区域内の農地は生産緑地か否かに区分されました。

生産緑地に指定されなかったその他の農地は、宅地並みに課税がされたことで宅地への転用が促進されました。

そのほとんどはマンションや建売住宅の敷地等に生まれ変わっています。

「生産緑地の2022年問題」とは何か?

1992年に指定された生産緑地ですが、営農義務期間である30年後が経過した2022年以降、農地の宅地転用が大量に発生することが予測されています。

元来、営農義務期間終了後は、自治体がこれらの生産緑地を買い取ることとしていました。

しかし御存知の通り、地方財政が年々厳しくなってきており、自治体が買い取るのは現実的には不可能と言われています。

一方、生産緑地の指定が解除されることで税制の優遇がなくなり、固定資産税額が数十倍から数百倍になった場合、その税負担に耐えきれない農家が大半となるでしょう。

多くの農家が後継者不足という問題を抱えていることも踏まえると、営農を断念し、農地の売却が大幅に増加するのではないかと予測する識者は少なくありません。

「生産緑地の2022年問題」とは、市場に宅地が大量に共有されることで、地下の大幅な下落や空き地の大量発生が懸念されていることを指します。

全国の生産緑地の約8割が2022年に30年の期限を迎える

全国では約13,200ヘクタールの生産緑地がありますが、その内訳は関東地方が57.5%、中部地方が11.8%、近畿地方が30.7%となっており、三大都市圏で全体の約99.9%を占めています。近畿の中では大阪府が約2,030ヘクタールと1番大きく、近畿圏全体の約半数を占めています。

なお全国の生産緑地の約8割にあたる10,400ヘクタールが、1992年に生産緑地に指定されてから30年の期限を2022年に迎えることになります。

詳細は以下の表を参照してください。

「生産緑地の面積(全国)」

都市圏の生産緑地が宅地転用されることで、ハウスメーカーやマンションデベロッパーなどが買主として登場し、大量の戸建・アパート・マンションなどが市場に出回るでしょう。

生産緑地の宅地転用がもたらすデメリット

生産緑地が一気に宅地化することで、特に集合住宅の場合、供給戸数が一気に増加し、市場の需給バランスを大きく歪めることが懸念されています。

埼玉県羽生市は2003年、人口増を見込んで住宅建設が原則不可となっている市街化調整区域の農地に住宅を建築できるよう条例を定めました。

市の狙いは、戸建て住宅を増やして定住者を確保することでしたが、建設業者などの介入もあり、実際には新築のアパート150棟が乱立。

空室率が35%を超え、同市の規模からすると明らかな供給過剰状態に陥り、同市は12年後の2015年に住宅建設可能なエリアを2003年以前の状態に戻すことを余儀なくされました。

政府はこの問題を受けて、都市農地の保全を推進する姿勢を示し、制度の制定・法改正を行うこととなったのです。

政府による懸念の払拭に向けた制度・法改正

大量の土地(農地)が市場に流入・供給を緩和するために新たな制度の制定・法改正が行われました。

特定生産緑地指定制度

2017年に制定された同制度は制定されました。

生産緑地指定から30年の年限が近づいた農地を市町村が特定生産緑地として指定することで税制優遇を継続させ、買取りの申出をすることができる時期を10年間先送りにすることができる内容となっています。

都市農地貸借法(正式名:都市農地の貸借の円滑化に関する法律)

2018年9月に成立した同法により、都市農地(市街化区域内の生産緑地)を他の農家や市民農園を経営する企業に直接貸し出すことが可能とし、必ずしも農家自身が営農しなくても農地を所有し続けることができるようになりました。

<農業体験農園、地場産野菜マルシェの、都市農業の活性化が進んでいます!>

サポート付き市民農園『シェア畑』を展開する(株)アグリメディア(東京都新宿区)は、2012年から『シェア畑』の運営を開始。

1都3県を中心に80ヵ所、面積にして約18ヘクタールの畑を地主から借り上げ、6㎡ほどの区画に分けて月額8,000円程度で貸出しています。

栽培に必要な種や農機具などは全て完備されており、利用者は手ぶらで通えるのが特徴で利用者数は全国で6,000組2万人にものぼる。

他にも都市農地賃借法の改正や『シェア畑』に関するセミナーも月1~2回開催し、農地所有者や不動産会社、税理士などで毎回満席という状況。

農地を使ってほしいという問い合わせが法改正以前よりも3割程度増えるなど、活況を呈しているようです。

田園住居地域の制定

2018年4月1日に都市計画法が改正され、住居系用途地域の一類型として、田園住居地域が創設されました。

これは農業の利便性の推進を図りつつ、良好な低層住宅の環境を保護する地域を定めたものです。

住宅と農地が混在するエリアで、両者が調和して良好な居住環境と営農環境を形成している地域をあるべき市街地像として都市計画に位置付け、開発/建築規制を通じてその実現を図ることを狙いとしています。

①開発規制

・農地の開発(土地の造成など)について、市町村長の許可制とする。

・市街地環境を大きく改変するおそれがある一定規模(300㎡程度)以上の開発行為等は原則不許可とする。

②建築規制

・低層住居専用地域に建築可能なもの。

・住宅、老人ホーム、診療所 等 ・日用品販売店舗、食堂・喫茶店、サービス業店舗等(150㎡以内)。

・農業の利便増進に必要な店舗・飲食店 等(500㎡以内) 農産物直販所、農家レストラン、自家販売用の加工所等。

・農産物の生産、集荷、処理又は貯蔵に供するもの温室、集出荷施設、米麦乾燥施設、貯蔵施設等。

・農産物の生産資材の貯蔵に供するもの 農機具収納施設等。

③形態規制

・低層住居専用地域と同程度の容積率(50~200%、建ぺい率:30~60% 高さ:10もしくは12m)。

④税制措置

・田園住居地域内の宅地化農地(300㎡を超える部分)について、固定資産税等の課税評価額を1/2に軽減(令和2年度分より適用)。
・田園住居地域内の宅地化農地について、相続税・贈与税・不動産取得税の納税猶予を適用。

まとめ

生産緑地について、ここまでの内容を以下にまとめます。

・1992年に指定された生産緑地の年限30年が2022年に迫っている。

・全国では約13,200ヘクタールの生産緑地があり、そのうち約8割にあたる10,400ヘクタールが2022年に年限を迎える。

・年限を迎えた生産緑地は、優遇が解除され税負担が増大することから、売却案件として不動産市場に供給され、需給バランスの不安定化が懸念される。

・政府および自治体は制度・法改正を実施し、生産緑地指定を受けつつ、これまでのような営農負担がかからない選択を可能としました。

・今までは実質的に所有(営農)か売却という選択肢のみであったが、加えて賃借(土地活用)という新たな選択肢が生まれました。

・選択肢の増加により、生産緑地が宅地として一斉に供給されることが緩和されることで、不動産価値の暴落の緩和にもつながるとみられる。

制度・法改正によって2022年に生産緑地が一斉に宅地化に向かう可能性は低減されましたが、長期的には不動産市場への大量供給による不動産価値の下落リスクは残ります。

土地の所在エリアが、住宅建設が可能なエリアであれば、生産緑地は市街化区域内の土地であることを考慮すると、土地活用のポテンシャルは高いと言えるでしょう。

加えて、当該地が田園住居地域に指定されれば、活用の幅はさらに広がります。個人施行の区画整理(換地)定期借地権の活用を中心とした居住用不動産はもとより、事業用不動産(店舗・事務所)、トランクルーム、駐車場などが想定されます。

また、今後少子高齢化が進む中で社会福祉施設や近年ブームとなっている市民農園などは一定のニーズがある状態が続くものと思われます。

生産緑地の2022年問題は、不動産事業者の観点でみると、将来的な不動産売却・活用に向けたコンサルティングに一層の注力が求められるビジネスチャンスと言えるでしょう。

<執筆者プロフィール>

T.S.MarketingLAB

不動産ポータルサイト運営企業でマーケティングを担当していた経験を活かし、不動産市況・業界動向・エンドユーザーのトレンドなどについて、各種メディアでライターとして情報発信を行うほか、不動産関連ビジネスのコンサル・業務課題ソリューションなども展開している。

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