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基準地価に見るコロナ禍の不動産市況と今後の展望

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国土交通省が8月29日に発表した基準地価(7月1日時点)において、東京・大阪・名古屋の三大都市圏の住宅地すべてでマイナスとなり、中でも東京・大阪の下落は7年ぶりというものでした。

ここ数年は、アベノミクス・東京オリンピック・インバウンド需要などによって上昇基調にあった地価ですが、新型コロナウイルスの影響で都市部の開発を引っ張った訪日外国人需要が消失したことで、横ばい一部下落傾向となっています。

ウィズコロナにおけるニューノーマルによって新たに生まれた需要が新たな不動産の価値を生み出しつつありますが、ここ数年の地価押し上げ効果をカバーするには至っていません。

この記事では、コロナの影響を織り込んだ最初の大規模地価調査となった基準地価の動向を検証・分析し、不動産の市況の現状と今後の展望について考えます。

基準地価とは何か?

基準地価の検証・分析を行う前に、基準地価とは何か?についてまとめます。

基準地価とは、各都道府県内から選んだ全国2万ヶ所以上の1平方メートルあたりの価格で、毎年7月1日時点の各地点の評価を各都道府県で算定し、国交省が取りまとめた上で毎年9月下旬頃に公表されるものです。

公示地価・路線価との違いは何か?

似たような指標として、公示地価や路線価があります。

土地の価格は公的機関から公表される基準地価・公示地価・路線地価をもとに算出されます。

それぞれの指標は評価機関および評価・公表時期が異なります。

公示地価

公示地価は、「都市計画区域内の土地」の1平方メートルあたりの価格で、毎年1月1日時点の土地の価格を国土交通省土地鑑定委員会の評価により決定し、毎年3月下旬に公表されます。

基準地価が「都道府県が決定する、都市以外も含む土地の価格」である一方、公示地価は「国(国土交通省)が決定する、土地の土地の価格」であることが相違点となっています。

路線価

路線価は、調査地点となる路線(道路)に面する土地1平方メートルあたりの価格のことで、宅地にかかる相続税や贈与税を計算する時に使用します。

公示価格と基準値標準価格を100とした場合、路線価の評価割合は80%になります。一般の土地取引価格よりも路線価で評価した土地の価値は目減りするので注意が必要です。

基準地価・公示地価・路線価については、それぞれの特徴などを以下の表にまとめましたのでご参照ください。

評価する機関 評価時期 公表時期 関連法律
基準地価 各都道府県 毎年7月1日時点 毎年9月下旬 国土利用計画法
公示地価 国土交通省土地鑑定委員会 毎年1月1日時点 毎年3月中旬 地価公示法
路線価 国税庁 毎年1月1日時点 毎年7月初旬 相続税法

2020年の基準地価の検証・分析

全国の概況

2020年の基準地価は、全国平均で0.6%の下落となり、三大都市圏は昨年の2.1%増から横ばいとなりました。

地価が下落した地点数の割合は昨年の48%から60.1%に上昇し、5年ぶりに6割を超える結果となっています。

これらは、新型コロナウイルスによる経済の停滞を如実に表した結果と言えるでしょう。

ここからは土地の用途別に調査結果を検証し、新型コロナウイルスの影響がどういった分野に影響を及ぼしているかを分析してみたいと思います。

商業地

商業地は新型コロナウイルスの影響が最も現れた分野と言えます。

全国平均は昨年の1.7%上昇から0.3%の下落に転じ、住宅地・工業地などに比べると下落幅が大きくなっています。

その影響は特に都市部で顕著で、三大都市圏は昨年の5.2%上昇が0.7%上昇にまで失速しました。

新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う外出自粛や在宅勤務の普及によって、不動産取引の伸びが鈍化し、オフィス・ホテル・商業施設などの需要が消失したことが要因と考えられます。

また、近年地価を押し上げる要因となっていたインバウンド需要が、海外渡航・入国制限などの影響で消失し、訪日外国人観光客が大幅減となったことも大きく影響しています。

特に東京の銀座や新宿、大阪の道頓堀付近などの繁華街エリアにおいて、地価の値下がりが目立っており、商業地は東京・大阪のいずれも上昇幅が縮小、名古屋は8年ぶりの下落に転じるという結果となりました。

オフィス街

オフィス街には大きな変動は見られませんでした。大手企業やIT系企業でリモートワークやサテライトオフィスの導入を促進する旨のアナウンスが散見されますが、緊急事態宣言後の各種調査によれば、大半の企業・労働者はリモートワークを選択しない・選択できないという状況にあります。

また、ソーシャルディスタンスを確保するという意味では、これまで以上にスペースが必要になるとも考えられますので、この動きは当面においては限定的と言えるでしょう。

しかし、都市部オフィスの空室率はじわじわと上昇傾向にあります。多くのオフィスの契約は数年単位で契約されていますので、新型コロナウイルスによるオフィス解約は、今後徐々に顕在化してくると考えられます。引き続き注視していく必要があるでしょう。

住宅地

東京・大阪・名古屋のいずれにおいても住宅地の地価はすべてマイナスとなり、東京・大阪の下落は7年ぶり、名古屋は8年ぶりの下落となりました。

しかし、商業地などに比べると住宅地の取引自体は堅調な状況です。

に一戸建ては、ウィズコロナ・ニューノーマルのトレンドの中で、自宅時間の質・量の変化に合わせてスペースを確保する、三密をできるだけ回避したいというニーズに合致し、郊外物件を中心に成約数が増加しています。

以下、首都圏・近畿圏の中古マンション・中古戸建の7〜9月期の成約数・価格をまとめていますのでご参照ください。

成約数(件) 前年同月比 平米単価(万円) 前年同月比
首都圏中古マンション 9,537 101.4% 55.63 103.60%
近畿圏中古マンション 2,746 92.5% 28 85.90%

出典:「東日本不動産流通機構」「近畿圏不動産流通機構」


成約数(件) 前年同月比 成約単価(万円) 前年同月比
首都圏中古戸建て 3,664 108.5% 3,162 102%
近畿圏中古戸建て 2,921 92.3% 1,827 96.90%

出典:「東日本不動産流通機構」「近畿圏不動産流通機構」

投資家が見た日本の不動産

不動産投資市場においても、新型コロナウイルスの影響は大きく、3月以降の取引で延期・キャンセルが相次ぎました。

しかし、緊急事態宣言が解除された6月以降は徐々に取引が再開され、米物流大手プロロジスなどは神奈川県や千葉県の物流施設を相次ぎ取得、米投資ファンドのブラックストーン・グループは大和ハウス工業から国内4施設を総額550億円で取得するなど、物流施設を中心には売買や価格上昇が続いていくとみられます。

以下のグラフは、世界最大の事業用不動産サービスおよび投資顧問会社のCBREが2019年1月と2020年6月に行った調査「不動産投資において選好したい日本国内のアセット」を比較したものです。

近年は、インバウンド需要が拡大していた影響などもあり、オフィス・ホテル・商業施設などが投資先としての人気を高めていましたが、今回の調査では一転して物流・マンションが伸長し、上位かつ全体の2/3を占める結果となっています。

ここ数年は投資マネーの流入が国内の地価を緩やかに上昇させてきました。現在も世界的に金余りな状況は続いているため、投資家の投資資金は潤沢な状況が続いていると考えられます。コロナ禍が収束し、経済活動を着実に再起動できれば、物流・マンションへの投資が促され、地価は持ち直すというシナリオも考えられます。

まとめ

ここまで、基準地価の結果を踏まえて、新型コロナウイルスの影響が不動産にどのような影響を与えているかを検証・分析してきました。

新型コロナウイルスが生み出したウィズコロナ・ニューノーマルによって、在宅勤務の拡大、三密の回避など、日常生活は大きく様変わりしました。それに伴って、特にオフィスは都心から郊外へという流れが生まれたことで需給が緩み、地価を押し下げる遠因となっています。

一方の住宅では、都心から郊外へという流れは見られるものの、都心需要は成約数・価格のいずれにおいれも底堅く推移しています。新型コロナウイルスは、バブルやリーマンショックの時とは異なり、先進国を中心に大規模金融緩和を実施したことで、金融システムの崩壊を阻止した点が異なります。

そのため、3月の日経平均は一時的に1万6,000円台まで値を下げましたが、2020年10月末現在で2万3,000円台まで回復しています。住宅購入を後押しする超低金利も当面は継続される模様で、不動産の需要・価格を下支えする状況が当面続くものと考えられます。

<執筆者プロフィール>

T.S.MarketingLAB

不動産ポータルサイト運営企業でマーケティングを担当していた経験を活かし、不動産市況・業界動向・エンドユーザーのトレンドなどについて、各種メディアでライターとして情報発信を行うほか、不動産関連ビジネスのコンサル・業務課題ソリューションなども展開している。

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