相続

遺言書作成前に知りたい「3つの形式」―内容を無効化させないための基礎知識

投稿日:2020-02-25 更新日:

遺言書には法的に3種類の形式があり、それぞれに細かい作成ルールが定められています。形式の選択ミスやささいな書式逸脱のせいで、せっかくの考え抜いた遺言内容が法律上「無効」になってしまう失敗は、何としてでも避けたいところでしょう。

これから相続の準備を始める人へ、遺言形式それぞれの利点と作成ルール・内容が無効になる代表的な原因について紹介します。

 

遺言書の3つの形式

遺言形式の違い・メリットとデメリット

遺言内容が決まると「忘れないうちに自筆やPCで作成しておこう」という気持ちになるのではないでしょうか。確かに便箋やワープロ文書での遺言書も有効ですが、それは文面と作成手順しだいです。どんな方法で遺言内容をしたためるか決める前に、まずは遺言書の3つの形式を知った上で、その利点や短所を押さえておくことが大切です。

【遺言書の3形式】

●自筆証書遺言
…相続法で指定された形式通り、ペンで紙に内容を記入する遺言書

●秘密証書遺言
…自筆もしくはワープロで作成した書面を公証役場に持ち込み、証人の前で封を施した遺言書

●公正証書遺言
…地域の公証役場で内容を伝え、代理で作成してもらった遺言書

 

自筆証書遺言

自筆証書遺言のメリットは、パソコンを使用せず思うままに内容を記述できる点です。実際に作成する際は、印鑑・日付・訂正ルールなどの法定の書式(民法第968条/以下で紹介)を守らなくてはなりません。

【自筆証書遺言の作成ルール】

  • パソコンでの作成は不可
  • 「作成年月日」「遺言者の氏名」を自筆で記入し、押印※する
  • 訂正の際は、①二重線を引いて訂正後の内容を書き、②訂正箇所に押印し、③訂正箇所を示す内容を別の場所に書き込む

 

秘密証書遺言

秘密証書遺言のメリットは、作成過程から内容を誰にも見られずに済むパソコンで作成できる点の2つです。

自筆証書遺言に比べると簡便さは劣りますが、できるだけ家族に知らせたくない内容(子どもの認知・一部の家族に相続させない旨の記述など)を隠しておけるのが好都合です。

 

作成のポイントとなるのは、遺言内容を書き終えて封筒に入れた段階です。第三者が中身を見ていない事を証明するため、証人2名を用意した上で、公証役場で封をしなければなりません(民法第970条3項・同条4項)。

自分で封じてしまったものは「自筆証書遺言」と同じ扱いになり、中身をパソコンで作成していると無効になります。十分注意しましょう。

 

公正証書遺言

公正証書遺言のメリットは、無効化や紛失のリスクをほぼゼロにできる点・相続開始時の「検認」が不要になる点の2つです。

 

内容さえ決まっていれば文面作成は役場のプロに任せられ、作成した遺言書はそのまま役場で保管されます。写しを紛失してしまっても、家族に公証証書遺言があることを伝えておけば、簡単に発見してもらうことが出来るでしょう。

 

また、これまで紹介した自筆証書遺言・秘密証書遺言は、どちらも発見時に家庭裁判所のチェック(=検認)を受ける必要があります。私的に作成されて保管されていた以上、どうしても作成ルール逸脱や偽造リスクは防ぎきれないからです。

公正証書遺言であれば、役場の担当者(公証人)が作成したことは明らかですし、無効化や偽造の可能性はほぼありません。そのため家庭裁判所でのチェックは省略でき、遺された家族に余計な手間をかけずに済むのです。

 

遺言書が無効になる理由

遺言書が無効になる代表例

「作成ルールの理解が十分であるにもかかわらず、いざ検認を受けてみると無効だった」というケースは稀ではありません。代表的な事例を3つ紹介してみましょう。

 

書式に誤りがある(自筆証書遺言)

最も多いのは、自筆証書遺言で法定の書式から逸脱しているケースです。

【よくある無効例】

  • 押印されていない
  • 作成年月日の記載がない
  • 作成日ではない別の日付が記載されている
  • 二重線で訂正されているのに、訂正箇所を指示する文面がない

十分注意したつもりでも「慌てて書いた」「書いている最中に別の用事が入った」等の理由でミスが生じる可能性は否めません。落ち着いて書ける環境とタイミングを用意して、あとでしっかり見直しを行うのが良いでしょう。

 

2人以上で共作されている

遺言書はあくまでも本人の意思を反映するものであるため、複数人で一緒に作成されたものは無効です。よくあるのは、夫婦や親子で作成し、そのまま全員を署名してしまうケースです。

遺言内容を相談して決めたいときは、家族との話し合いは事前段階に留めて、作成はひとりで行いましょう。

 

文言の内容が不明瞭

遺言書の内容は「どの財産を誰に譲るのか」というものであるべきです。思いを綴りすぎて相続に関する記載があいまいになったり、相続させることをはっきりと書いていない場合は、それだけで遺言が無効になってしまいます。

【よくある無効例】

  • 「財産を任せる」と書いてあるが、管理を依頼したいのか、それとも相続させて自由に使ってほしいのか、はっきりと分からない。
  • 仲の悪かった相続人について想いが記載されているが、はっきりと「相続人から外す」(廃除する)とは書かれていない

そもそも、遺言書の文面の書き方は特殊です。うまく考えを文書に落とし込めないときは、専門家に意見を聞いてみてもよいでしょう。

 

おわりに

相続財産や家族に対する想いは様々です。ルールに沿って想いを形にできるなら、どの遺言形式を選んでも構いません。

一方で、自力ではどんなに注意しても無効化リスクが避けられないのは難点です。遺言形式を選択する段階から、出来るだけ専門家の提案や二重チェックを受けると良いでしょう。

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