相続

家族で知りたい「相続税の基礎知識」

投稿日:2020-02-04 更新日:

相続はいつやってくるか分からないライフイベントのひとつです。

余裕をもって備えるために、相続税の基礎知識はご家族全体で共有しておくと良いでしょう。難しいと感じる人の多い相続税の計算方法を中心に、分かりやすく解説します。

 

相続税の基本

亡くなった家族の財産を受け継ぐ人は「相続開始があったことを知った日(死亡日)の翌日から10ヵ月以内」に相続税の申告手続きが必要です。

相続税は税務署から知らされるわけではなく、あらかじめ申告する人が自分で計算しなければなりません。そのため、どんな財産に相続税がかかるのか、どういった計算方法をとるのか、それぞれ詳しく把握しておく必要があります。

 

相続税の課税対象となる財産

最初に、相続税がかかる財産を簡潔にまとめてみましょう。

  • 被相続人が亡くなった時に所有していた財産
  • 亡くなる前の3年以内に生前贈与された財産

ここでいう「財産」とは、以下のようなものが当てはまります。

【相続税の課税対象となる財産(相続財産)】

  • 現金・預貯金
  • 有価証券(株式・投資信託・公社債など)
  • 不動産(宅地・山林・農地など)
  • 土地上に存在する権利(借地権・地上権・敷地権)
  • 動産(自動車や家具)
  • 債権(売掛金・損害賠償請求権など)
  • 債務(買掛金・銀行から受けた融資の残債など)
  • 知的財産権(著作権・商標権・特許権)
  • その他…ゴルフ会員権・亡くなった人が受取人である保険金など

 

相続税が課税されない財産

ただし、以下のような財産は相続税の課税対象外です。退職金と保険金には非課税額に上限額があり、超過した部分は課税されてしまうことに注意しましょう。

【課税対象外となる財産】

  • 死亡退職金(上限額:500万円×法定相続人の数)
  • 死亡保険金(上限額:500万円×法定相続人の数)
  • 祭祀財産(お墓・仏壇・家系図など)

 

法定相続分・法定相続人とは?

家系図・相続人関係説明図

相続税の計算では「法定相続」の考え方がポイントです

遺産の取り分を決めるときは、ほとんどの家庭で遺言書もしくは遺産分割協議(家族間の話し合い)に沿う方法を取るでしょう。実は法律上でも、亡くなった人との続柄により相続権のある人とその取り分(=法定相続人・法定相続分)が定められています。

配偶者が最優先で相続し、残りの財産は子どもへ、子供がいない場合は直系尊属へ、さらに直系尊属すらいない場合は兄弟姉妹へ…とのように、相続順位と呼ばれる優先順位に従って取り分を自動的に決定させることも出来るのです。

配偶者 他の相続順位の人がいない場合:遺産全体を承継
第一順位と相続する場合:1/2
第二順位と相続する場合:2/3
第三順位と相続する場合:3/4
第一順位 子ども(全配偶者との子・非嫡出子・養子含む)
第二順位 直系尊属(父母や祖父母など)
第三順位 兄弟姉妹

相続税の計算では、いったん法定相続に従って取り分を決めたものとみなす方法をとります。

したがって、遺言書もしくは遺産分割協議書があるかどうかに関わらず、法定相続の考え方は基礎知識として知っておかなければなりません。

 

相続税の計算方法

それでは、相続税はどうやって計算するのでしょうか。

ただ計算式を紹介するだけでは分かりづらくなるため、ここでは以下の例を使って各人の納付する相続税を算出します。

遺産総額(亡くなった時に所有していた財産):1億円

生前贈与した額:3,000万円

⇒500万円贈与し、そのあと相続時精算課税※を適用して2,500万円贈与

法定相続人:母と子供2人

各人の取り分:母=7,000万円・子A=2,000万円・子B=1,000万円

葬儀費用:200万円

遺産に含まれる債務:500万円

非課税財産(死亡退職金・死亡保険金・祭祀財産):500万円

※「相続時精算課税」とは?

…相続人に対して生前贈与することで、贈与税を2,500万円まで非課税(超過分は一律20%課税)とする制度です。

 

Step1.課税遺産総額を計算する

相続税の計算の最初のステップでは「課税遺産総額」(相続税の計算ベースとなる遺産の金額)を計算します。

ここでは遺産総額(亡くなった時に所有していた財産)に亡くなる前3年以内の贈与財産を加算した上で、非課税財産と基礎控除額を除算します。

 

1-1.遺産総額に「相続時精算課税を適用した贈与財産」を足す

最初に、遺産総額に相続時精算課税を適用した贈与額を加えます。例を用いて計算すると次の通りです。

1億円+2,500万円=1億2,500万円

1-2.「相続税のかからない財産」を引く

次に、お葬式にかかった費用・遺産に含まれる債務・非課税財産を差し引きます。

1億2,500万円-(葬儀費用200万円+遺産に含まれる債務500万円+非課税財産500万円)=1億1,300万円

1-3.「相続開始前3年以内の贈与財産」を足す

さらに計算を進めましょう。すでに相続時精算課税を適用した贈与財産は算入済みなので、残る相続時精算課税を適用する前の贈与財産を加えます。

1億1,300万円+相続時精算課税を適用する前の贈与額500万円1億1,800万円

1-4.「基礎控除額」を引く

ここで最後です。相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人)を引きます。

例では母子3人が法定相続人です。課税遺産総額を計算してみましょう。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円

課税遺産総額=1億1,800万円-基礎控除額4,800万円=7,000万円

ここで相続税計算の第一段階が終了します。

 

Step2.相続税総額を計算する

ここからは納付する相続税の総額を計算します。

まず課税遺産総額を法定相続分に沿って分け、それぞれに相続税の税率を乗算して税額を出し、最後に合算します。

 

2-1.課税遺産総額から各人の法定相続分を計算する

先に紹介した法定相続の考え方に基づいて、課税遺産総額を各人の取り分に分けてみましょう。

課税遺産総額9,000万円

母:3,500万円(1/2)

子A:1,750万円(1/4)

子B:1,750万円(1/4)

2-2.各人の法定相続分から相続税の総額を計算する

次に、各人の相続分に税率を乗算し、さらに控除額を差し引きます。税率・税額控除額はさておき、まずは計算してみましょう。

母:3,500万円×税率20%-税額控除200万円=500万円

子A:1,750万円×税率15%-税額控除50万円=212万5千円

子B:1,750万円×税率15%-税額控除50万円=212万5千円

計算が終わったら合計します。

相続税の総額=母の納税額500万円+子Aの納税額212万5千円+子Bの納税額212万5千円=925万円

税率と税額控除は下記の通り、各人の法定相続分の金額に合わせて定められています。

【参考】相続税の税率・税額控除額

法定相続人の取得額 税率 控除額
1,000万円以下 10% 0円
1,000万円超3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超1億円以下 30% 700万円
1億円超2億円以下 40% 1,700万円
2億円超3億円以下 45% 2,700万円
3億円超6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

 

Step3.各人が納付する相続税を計算する

いよいよ最後です。

本例では、実際には法定相続とは違う割合で取り分を決めています。法定より取り分の少ない子供たちがStep.2で計算した相続税を支払うのは、不公平と言わざるを得ません。そこで、はじめに紹介した取り分の割合を振り返ってみましょう。

各人の取り分:母=7,000万円・子A=2,000万円・子B=1,000万円

⇒遺産総額に占める取り分は母70%・兄20%・弟10%

支払うべき相続税の総額はすでに計算できているため、取り分の割合に応じて家族が公平に分担します。

母の納税額:925万円×70%=647万5千円(配偶者控除で0円)

子Aの納税額:925万円×20%=185万円

子Bの納税額:925万円×10%=92万5千円

この段階で配偶者控除・未成年者控除・贈与税額控除などの相続人ごとに適用できる控除を使います。

本例では母の取り分が1億6千万円以内であったため、配偶者控除を適用して納税額をゼロに出来ています。

 

相続税のよくある疑問

Q&A

ここからは、相続税の計算方法にまつわるよくある疑問に回答します。

 

相続放棄すれば基礎控除は減る?

相続放棄した人がいても、基礎控除額は同じです。

基礎控除の計算では「相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人の数とする」という決まりがあります(相続税法第15条)。

 

養子縁組すれば基礎控除は増える?

養子縁組をすれば確かに基礎控除は増えますが、人数制限があります。

被相続人に実子がいれば養子は1人まで・実子がいない場合でも養子は2人までしか基礎控除を計算できません。例えば、長女の婿と養子縁組して基礎控除を適用しながら家業・財産を承継させようとする場合、他の子どもたちの配偶者については基礎控除に含めることが出来ないのです。

 

相続税が0円なら申告不要?

計算した結果相続税が0円であっても、相続税の申告は必要です。

各種控除は税申告を条件に適用されるもので、申告がない場合は控除適用がなかったものとして納税しなければならないからです。

 

申告期限までに遺産分割協議が終わらないときは?

相続税の申告期限である10ヵ月以内に取り分を決められないときは、いったん相続税を申告しなければなりません。

納税額については、いったん法定相続分に従って取り分を決めたものとし、各人の金額を計算します。

 

相続税を申告しないとどうなる?

注意しなければならないのは、相続税の申告をうっかり忘れてしまうことです。

税務署から未納を指摘されて税務調査された場合、無申告課税・延滞税のほかに重加算税が課せられる恐れがあります。

無申告課税:納付すべき税額の5%~20%

延滞税:納付すべき税額の年率2.6%(申告書の提出日翌日から2ヵ月後以降なら年率8.9%)

重加算税:納付すべき税額の40%

さらに悪いことに、申告せず未納分となっている税額に後から各種控除を適用することは出来ません。

申告漏れ・申告忘れには十分注意する必要があります。

 

おわりに

相続税の基本を押さえておけば、ご家庭ごとに生前の節税対策を練ることが出来ます。

最後に、一番ボリュームの多い相続税の計算方法をまとめましょう。

①課税遺産総額を計算する

課税遺産総額=亡くなった時点での遺産総額 + 相続税清算課税を適用した贈与額 - (葬儀費用+遺産に含まれる債務+非課税財産) + 亡くなる前3年以内の贈与額 - 基礎控除額※

※基礎控除額=3,000万円+(600万×法定相続人の数)

②法定相続分に沿って相続税総額を計算する

③相続税総額(②)を遺産の取り分の割合に従って按分し、各人の納税額とする

本記事では触れませんでしたが、不動産や有価証券の評価額の算出は、相続税を実際に計算する上で最も難しい部分となります。

今後も相続に関してご質問が合ったときに記事更新を続けます。

 

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