相続

相続時精算課税制度を理解するための3つのポイント

投稿日:2020-04-03 更新日:

生前贈与に適用できる「相続時精算課税」とは、相続税評価額に贈与分を含めることを条件に、贈与税の控除額・税率が優遇される制度です。

一見すると単なる納税猶予のように思える制度ですが、使いどころを選べば大幅な節税効果を引き出せます。相続時精算課税の基本的な適用要件を紹介した上で、暦年課税と比較しながら特徴を紹介します。

 

相続時精算課税制度の基本情報

相続時精算課税制度(以下精算課税とも)は、直系親族間での贈与財産について、控除額2,500万円・控除超過分は一律20%の税率を適用するものです。

ただし、本税制を適用した贈与財産は相続税の課税対象となる(=相続時精算)ため、課税評価額のトータルは下がりません。決して正確ではないものの「贈与時にかかる税の支払いを相続開始時まで繰り延べる制度」とも説明可能です。

 

「相続時精算課税制度」の適用条件

贈与者…60歳以上の父母または祖父母

受贈者…20歳以上の子または孫

適用対象…申請後から相続開始時までの贈与財産

控除額…2,500万円

税率…一律20%

申請方法…最初に贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日に、受贈者の納税地管轄税務局で手続き(戸籍謄本などの相続関係を示す添付書類要)

 

相続時精算課税制度の3つの特徴

相続時精算課税の特徴

実のところ、贈与に対して適用される通常の課税方法(=暦年課税)に比べると、相続時精算課税による節税効果は限定的です。いったん本税制を適用すると暦年課税に戻せないため、事前に遺産承継のイメージをしっかり固めて課税額を試算しておく必要があります。

 

分割して贈与するなら暦年課税のほうがお得

相続時精算課税で最も注意したいのは、相続開始時まで基礎控除の枠が固定されてしまう点です。暦年課税の基礎控除額(年間110万円)のまま贈与を行うとすると、23年目で控除額2,530万円に達し、精算課税を枠を上回る計算になるのです。

さらに、暦年課税での相続時精算の範囲は「相続開始3年以内の贈与」と限定されている点にも要注目です。

結論として、1回あたりの課税評価額を110万円以下に押さえて毎年贈与するのであれば、暦年課税のままのほうがむしろ節税できる見込みが高いと言わざるを得ません。

 

【例】課税評価額6,000万円の被相続人の資産のうち、現金資産2,500万円を唯一の法定相続人である子に生前贈与するケース

①暦年課税のまま10年間にわたって100万円ずつ贈与した場合

 贈与税:0円(課税評価額1,000万円・基礎控除額累計1,100万円)

 相続税:205万円(課税評価額5,300万円・基礎控除額3,600万円)

①相続時精算課税を適用し、相続開始の10年前にまとめて贈与した場合

 贈与税:0円(課税評価額2,500万円・基礎控除額2,500万円)

 相続税:310万円(課税評価額6,000万円・基礎控除額3,600万円)

 

小規模宅地等特例の併用はできない

相続時に適用できる「小規模宅地特例」とは、居住または事業用不動産の課税評価額を50%~80%減額する制度です。小規模宅地特例は相続時精算課税とは併用できないため、不動産の相続ではどちらがお得なのか慎重に判断する必要があります。

 

適用の判断に迷う具体例として、相続税対策の一環として投資用マンションを購入するケースが挙げられます。

購入から相続開始までに十分な年数があれば、相続税をまかなうのに足る運用益を積み上げられます。相続時精算課税の適用でいったんキャッシュを留保して、運用効率のアップに集中しても良いでしょう。

一方、購入時期が遅れて相続開始の間近になってしまった場合では、短期運用益で足が出ないよう購入物件の課税評価額を下げておく必要があります。相続時精算課税をむやみに適用せず。小規模宅地特例が使える状態にしておかなければなりません。

 

精算時は「贈与時点の評価額」で課税される

暦年課税のまま贈与した場合、贈与財産への課税は「相続時点」の評価額で行われます。これに対し相続時精算課税を適用した場合では、贈与財産の課税評価額は「譲った時点」のまま据え置きされます

将来にかけて価値上昇が見込まれる財産を譲渡したいケースでは、精算課税の評価方法は有益です。ただし、価値変動が大きい資産(投資目的で買った有価証券など)への適用はリスキーと言わざるを得ません。適用対象の資産の性質を良く見極める必要があります。

 

相続時精算課税の適用要否を検討するときのポイント

相続時精算課税制度の適用可否を判断するポイント

相続時精算課税の特徴から見て、土地建物・自社株式などの「分割しづらい性質の資産」で節税効果を引き出しやすい傾向があります。

その上で、暦年課税なら相続開始までにどのくらいの控除額が得られそうか、相続時精算課税以外に課税評価額を引き下げる方法がないのか、ひとつひとつ押さえながら税対策を検討しなければなりません。

 

相続財産の流れを変えることで節税できる場合もあり

直系親族間での贈与にこだわらず、配偶者に贈与して二次相続時に子へ承継させるプランを組むのも節税テクニックのひとつです。

 

参考】配偶者への贈与or遺贈に適用できる税制

  • 夫婦間の居住用不動産の贈与

…婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産の贈与が行われた場合、基礎控除110万に特別控除2,000万円を上乗せする制度

  • 相続時の配偶者控除

…配偶者が取得した遺産について、最高1億6千万円まで非課税とする制度

節税対策は資産配分と家族構成により異なるため、なるべく専門家のアドバイスを得ましょう。

 

おわりに

相続時精算課税は「贈与財産への課税を遅らせる」ものに過ぎず、課税評価額の引き下げは叶いません。

しかし、相続開始までの年数が短い場合は暦年課税よりも控除額が広がる点や、贈与時点から相続税評価額が据え置かれる点は要注目です。専門家と相談して、何がベストか見極めていくと良いでしょう。

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