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遺言書には何が書けるのか―死後効力を持つ8つの記載事項

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遺言書に記載できる事項は多様であり、作成時は適宜指定を駆使することで「高齢者や未成年者に配慮したい」「信頼できる人に遺産分割を主導してほしい」という想いを叶えられます。

下記で紹介する、8種類の”死後効力を持つ遺言内容”を事前に押さえれば、文面作成の一助となるでしょう。

 

相続分を指定する(割合指定・遺贈)

相続分の指定・遺贈の指定

一般的によく知られる通り、遺言書では各人の相続分を指定できるほか、相続権のない人に財産を承継してもらう(=遺贈)ことも可能です。

遺言書で相続分や遺贈を指定するときは「①全財産に対する割合」もしくは「②特定の資産」を指示します。ただし、①の指示に関しては、経済的利益を持たらす財産だけでなく、債務など”負の遺産”も割合で承継させることになる点に要注意です。

【遺言書の文例】

”遺言者の有する下記の不動産は、妻花子に相続させる。

(※続けて、登記簿記載の不動産情報を記載)”

 

相続人構成を変更する(認知・廃除)

遺言書で子の認知or相続権のはく奪が出来る

遺言書では、相続人構成の変更につながる下記の指定も効力を持ちます。

 

●子の認知

…婚外子と法的な父子関係を生じさせる手続きで、認知された子には嫡出子と同じ割合で相続権が生じます。

【遺言書の文例】

”遺言者は下記の者を認知する。

(※続けて、認知したい子の氏名・住所・生年月日・本籍地を記載)”

 

●相続人の廃除

…生前の被相続人に対し許容しがたい行為(虐待や非行など)を行った人物から、その相続権を剥奪できます。

【遺言書の文例】

”遺言者は、遺言者の三男である三郎をを相続人から廃除する。

(※続けて、廃除の理由を記載)”

 

なお、遺言で認知・廃除があった場合「遺言執行者」の選任が必須です。

選任は死後家庭裁判所に任せても構いませんが、なるべく遺言で信頼できる人物を指名しておくべきです(詳細は後述)。

 

相続人死亡後の承継先を指定する

相続人が先に死亡する可能性があるときの遺言

高齢者や病人が相続人に含まれていると、遺言書を作成する人よりも早く(あるいは同時期に)亡くなり、指定した遺産分割の内容が実現できない可能性があります。

そこであらかじめ「遺言者の死亡時点で相続人が亡くなっている場合、その相続分を誰が承継するのか」を遺言書で決めておくことが出来ます。

【遺言書の文例】

”妻花子が遺言者より先又は同時に死亡したとき、花子に相続させる財産の一切は、遺言者の長女の子である花代に遺贈する。”

 

条件付きで相続させる

条件付きで相続させたいときの遺言

相続分指定や遺贈の際は、下記のように条件を付すことが出来ます。

条件の種類の解説に先立ち、まずは文例を紹介します。

【遺言書の文例】※負担付遺贈の場合

”1.遺言者の有する下記の不動産は、長男の子である太郎に遺贈する。

(※続けて、登記簿記載の不動産情報を記載)

2.前条の受遺者太郎は、遺言者の妻花子の存命中、当該不動産に同人を無償で居住させ、月額5万円を毎月20日までに支払うものとする。”

 

停止条件付遺贈

「大学に進学したら遺贈する」「経営する会社の代表取締役に就任したら遺贈する」とのように、条件が成就したときに遺贈の効力が生じる旨の遺言です。

 

解除条件付遺贈

「大学を辞めてしまったら遺贈を取り消す」「事業に失敗し廃業したら遺贈を取り消す」とのように、条件が成就したときに遺贈の効力を失わせる旨の遺言です。

 

負担付遺贈・負担付き相続させる遺言

債務の承継・介護や扶養・ペットの世話など、何らかの負担を条件に遺贈(または相続)させる旨の遺言です。

本遺言内容については、法定相続人以外に遺産を承継させる場合「負担付遺贈」、法定相続人に承継させる場合「負担付き相続させる遺言」と呼びます。

 

条件付きで相続させるときの注意点

相続(または遺贈)に何らかの条件を付けるときは、実現可能性のある内容にしましょう。少なくとも、公序良俗に反すること(愛人契約や婚姻の強制など)は認められません。

 

また、負担付遺贈は放棄される場合もあります。

内容は必ず「利益>負担」になるようバランスに配慮し、放棄された場合の遺贈分の扱いについても遺言しておきましょう。

 

遺言執行者を指定する

遺産分割を信頼できる人に任せたいときの遺言

相続人の代理人として遺言内容を実現するための権利義務の一切を有し、預金の払戻しや相続登記などを主導する人物を「遺言執行者」と呼びます。

遺言書では、司法書士・弁護士・信託業者・最も信頼できる相続人などのなかから、任意で「遺言執行者」に指名できます。

【遺言書の文例】

”遺言者は、この遺言を執行する者として下記の者を指定する。

(※続けて、指名する人の氏名・住所・生年月日・本籍地を記載。司法書士や弁護士等を指定する場合は、本籍地と生年月日の代わりに士業名を記載)”

 

生命保険の受取人を変更する

死亡保険金の受取人を変更したいときの遺言

遺言書では、加入中の生命保険の受取人を変更することも可能です。ただし、変更後の受取人が実際に給付を得るには、相続開始後に保険会社で手続きする必要がある点に注意しましょう。

【遺言書の文例】

”令和1年4月1日に○○保険会社と締結した生命保険契約について、受取人である妻花子が遺言者より先又は同時に死亡したときは、長男一郎に受取人を変更する。”

 

法事や祖先供養の主宰者を指定する

信頼できる人に法事や家庭行事を任せたいときの遺言

祖先の供養や家庭に伝わる宗教的行事などの主宰者を「祭祀承継者」と呼びます。

遺言書では。祭祀承継者を指名し、仏壇や墓地などの主宰に必要な財産(=祭祀財産)を承継させられます。

【遺言書の文例】

”遺言者は、祭祀承継者として長男一郎を指定し、同人に仏壇仏具、山田家の墓、家系図その他祭祀に必要な財産の一切を承継させる。”

 

遺産分割を一定期間禁止する

遺産分割の時期を先送りにしたいときの遺言

遺言しても相続トラブルが回避できないような状況であれば、遺産分割を最長5年にわたって禁止できます。

活用の場面としては「相続人に未成年者(幼児や胎児含む)がいる」「家族が仲違いしている」等が考えられます。

【遺言書の文例】

”遺言者の有する一切の財産について、その分割を死亡後3年のあいだ禁じる。”

 

おわりに

ここで紹介した「遺言書に記載することで死後効力が発生する事項」は、遺言書全体に有効性があることが前提です。また、内容の指示を曖昧にせず、資産・相続人・条件などを明記しなければなりません。

指定したい内容によっては、当事者で話し合ったり、遺言書の形式を厳しく選定したりする必要もあるでしょう。ある程度遺言書のイメージが固まったら、書き方や追加で対応したほうが良い点についてついて専門家の指導を受けるのがベストです。

 

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