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宅建業従事者が知っておきたい「自然災害」に関する重要説明事項

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2018年より台風・豪雨・地震等の被害の大きい自然災害が相次いでいます。不動産取引でも、災害リスクに敏感な顧客とともに、あらためて関連法令について整理したいと考える宅建業者の方が増えているのではないでしょうか。

ここでは専門的な知識がなくても理解できるよう、自然災害に関する重要事項説明を俯瞰して解説します。

 

重説義務の対象となる区域

重説義務のある危険区域・防災区域とは

自然災害の発生源や被害想定区域については、下記法令を根拠に指定が行われています。災害指定区域等に関する理解が完全でなくとも、取引に際して随時法令を参照することで、事前に重説義務違反のリスクを回避できます。

 

【防災に関する重要説明事項の根拠法令】

  • 建築基準法
  • 宅地造成等規制法
  • 地すべり等防止法
  • 土砂災害防止法
  • 急傾斜地法
  • その他…津波法・河川法・砂防法・森林法

 

下記では指定された内容別に、自然災害の発生が懸念される各区域について説明します。

 

災害危険区域

津波・高潮・洪水・がけ崩れなどの危険が著しく高い地域は、建築基準法を根拠として「災害危険区域」に指定されます。

指定された区域は、同法施行令や都道府県の条例によって、住居・宿泊施設・病院・その他福祉施設の建築に厳しい制限が課せられます。

 

宅地造成工事規制区域・造成宅地防災区域

切土・盛土などをすることで災害発生の恐れがある地域は、宅地造成等規制法によって「宅地造成工事規制区域」あるいは「造成宅地防災区域」に指定されます。

指定された区域は、一定規模の造成をする際、都道府県知事の許可を得なければなりません。

 

ぼた山崩壊防止区域・地すべり防止区域

土地の一部が滑って下方に落ちる可能性がある地域は「地すべり防止区域」、かつて存在した炭鉱等の影響で捨石で出来た山がある土地は「ぼた山法化防止区域」とのように、地すべり等防止法を根拠に指定されます。

以上の指定区域では、工作物の新築や改良・立木竹の伐採・地表水の浸透を助長するような工事を行うにあたって、都道府県知事の許可を得なければなりません。

 

急傾斜地崩壊危険区域

傾斜度30度以上の土地やその隣接地は、土砂災害の危険があるとして「急傾斜地崩壊危険区域」に指定されます。

該当する区域では、やはり土砂の採取・立木竹の伐採・地表水の浸透を助長する等の工事を行うにあたって、都道府県知事の許可を得なければなりません。

 

土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域

土石流・地すべり・急傾斜地の被害を受ける恐れがある区域は、「土砂災害警戒区域」あるいは「土砂災害特別警戒区域」に指定されます。

該当する地域では、建築制限こそないものの、居室のある建築物については防災基準を満たすものとなっているか建築確認申請が必要です。また、要配慮者施設(介護施設等)の管理者に対しては、避難確保計画の作成に加え、避難訓練の実施が義務付けられています。

 

津波災害警戒区域内

最大クラスの津波が発生した際に人的被害が生じる可能性のある区域は、浸水想定を設定・公表した上で「津波災害警戒区域」に指定されます。

本指定を受けた区域は、一定の開発行為・建築・建築物の用途等に制限を受けます。他方、建築物のうち「一定基準を満たす避難用の施設」については容積率不算入とする等、防災や減災を意識した特例措置があります。

 

その他の防災区域

砂防法・河川法・森林法では、自然災害の防止あるいは軽減につながる土地を都道府県知事が指定することを認め、指定された区域における一定の改良行為(地形を変えるようなもの)は禁じられています。

 

【一例】砂防法・河川法・森林法における防災区域

  • 砂防指定地
  • 河川区域(1号・2号・3号)
  • 地域森林計画対象民有林・保有林・保有林予定森林

 

物件を調査するときのポイント

上記のような災害リスクに関する重説義務については、不動産取引業者側での事前調査が当然必要になります。

調査方法としては、通常実施される登記情報や現地の確認のほか、WEBで公開されているハザードマップの閲覧も考えられますが、いずれも100%確実な方法だとは言えません。その理由として「区域指定されるまでのタイムラグ」が挙げられます。

 

【参考】土砂災害警戒区域指定(または土砂災害特別警戒区域指定)の流れ

Step1.基本指針の作成(国土交通省)

…区域指定の方針や基礎調査の実施方針を定める

Step2.基礎調査(都道府県)

…現地調査を実施し、リスク分析を行う

Step3.区域指定(市町村等)

…避難体制の整備・建築物の構造規制・集団移転支援などを実施する

 

区域指定がない場合も「基礎調査の状況」を確認しておく

危険区域(あるいは防災区域)指定にあたって上記のようなフローを踏むことから、たとえ取引当時は指定がなかったとしても、時間差で新たに指定される可能性があります。これは言うまでもなく、顧客トラブルの火種になります。

そこで物件調査の際は、念には念を入れて「基礎調査の実施状況」を役場に問い合わせるのがベターです。調査中や未了の案件に関しては、重説義務にこだわらず説明を実施しておくことで、業者の負うリスクを軽減できます。

 

おわりに

災害大国である我が国では、災害リスクに関する重要説明事項が細分化・多様化しています。

知識を整理し、ピンとくる案件について根拠法令と調査をスムーズに進められるよう体制を整えておきましょう。将来における危険区域あるいは防災区域に指定される可能性まで予測できれば、取引業者としての信頼感アップにもつながります。

 

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