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相続税が安くなる「不整形地」とは?

投稿日:2020-05-10 更新日:

親世代からの相続で得た不動産は、必ずしも収益性を期待できるとは限りません。なかでも「不整形地」は、売却益や賃料収入の発生までに一定の初期投資を必要とするため、ともすると課税赤字で”負の遺産”化してしまいます。

こうした予測が立っていても、相続人に受け継ぐ土地を選ぶ権利は当然ありません。そこで課税方式の面から「不整形地」の承継負担を減らす目的で、相続税・贈与税に限り課税評価額を引き下げる”補正率”が設けられています。

下記では、不整形地のデメリットを整理した上で、税申告時に適用できる補正率の種類を紹介します。

 

そもそも「不整形地」とは

そもそも「不整形地」とは

そもそも不整形地とは、図面上の敷地形状が不規則に歪んでいる土地や、接道状況が悪く出入りが困難な土地を指します。

住宅を建設しても「日当たり不良」「移動ロス」などのさまざまな問題が発生し、快適な居住環境が実現できるとは言えません。建て売りや賃貸経営を考えている事業者に売却しようとしても、収益性が期待できず敬遠されてしまいます。売主側でなんとか整形地に直す方法も考えられますが、造成や隣地の買い取りには相応の初期投資が生じるでしょう。

問題は、土地をただ所有しているだけでも相続税・贈与税・固定資産税などのコストがかかる点です。土地を整える費用がなく、かつ価格を下げなければ売却先も見つからないようでは、その所有者に赤字を強いてしまうのです。

 

【一例】「不整形地」に入るもの

  • 三角地
  • 無道路地・袋地
  • 角地(交差点の側にある土地)
  • 旗竿地(間口が狭く敷地奥の幅が広い土地)

 

不整形地の税申告時に使える「補正率」とは

不整形地の評価を下げられる補正率には「不整形地補正率」「奥行価格補正率」のほかに、反対に評価を上げる「側方路線影響加算率」があります。

 

不整形地補正率

不整形地補正率は土地ごとに80%~95%のあいだで変動し、①土地の所在地・②地積・③かげ地割合の3要素から求められます。

 

①土地の所在地

課税評価額を計算するための路線価(もしくは倍率)が掲載されたサイト上での6区分を指します。

②地積

登記簿上に掲載された土地の面積(㎡)を指します。

③かげ地割合

そもそも「かげ地」とは、近似の整形地(=想定整形地)の図面を引いたときに、不整形地からはみ出している部分を指します。

かげ地割合は「かげ地の地積÷想定整形地の地積」で計算可能です。

実際に個別のケースで不整形地補正率を調べる際は、上記の3要素を求めた後に国税庁サイトの表に当てはめましょう。

 

奥行価格補正率

道路に接している部分(=間口)からの奥行距離が長すぎる土地に適用される補正率です。補正対象として典型的なものは、不動産業界で”ウナギの寝床”と呼ばれる土地です。

本補正率は80%~100%のあいだで変動し、奥行距離と土地の所在地を奥行価格補正率表に当てはめて求めます。

 

側方路線影響加算率

「角地」あるいは「準角地」のように、2本の道路が交わる地点にある土地の評価を増額補正するものです。

加算率は1%~8%で、土地の所在地ごとに奥行価格補正率表と同ページ内で調べられます。

 

※角地と準角地の違い

…T字路や十字路にある土地を「角地」とし、1本の道路の屈折部分にある土地を「準角地」とします。

 

【計算例】不整形地の課税額

実際に下図の”形状のわるい旗竿地”を想定して、相続税を計算してみましょう。

ここでは、想定整形地の評価額から隣接する整形地(①)の評価額を控除し、最後に不整形地の地積に合わせて評価額を算出しなおす方法を採ります。

※不整形地の課税額の計算方法は複数あります。本例はそのひとつであり、個別のケースについては必ず専門家に相談しましょう。

不整形地の基本情報は次の通りです。

  • 不整形地の地積:630㎡
  • 想定整形地の地積:900㎡
  • 隣接する整形地(①)の地積:200㎡
  • かげ地割合:40%
  • 路線価:10万円
  • 地区区分:普通住宅地区

なお、整形地として申告した場合の課税評価額と課税額は以下のようになります。

 

課税評価額:6,300万円(10万円×630㎡)

相続税:(6,300万円ー基礎控除3,600万円)×税率15%=405万円

 

Step1.補正率を調べる

まずは不整形地の各補正率を調べます。不整形地の平均的な奥行距離をとり、国税庁のサイトと照らし合わせて求めた数値が下記にあたります。

 

不整形地補正率=0.88

奥行価格補正率=0.95

※①の奥行価格補正率は1.00

 

Step2.想定整形地1㎡あたりの評価額を算出する

ここで、想定整形地の評価額から隣接する整形地(①)の評価額を控除し、1㎡あたりの価額を算出します。

想定整形地と①の各評価額の算出の段階で、奥行価格補正率を用います。

 

●想定整形地の評価額10万円×900㎡×奥行価格補正率0.95=8,550万円

●隣接する整形地(①)の評価額

10万円×200㎡×奥行価格補正率1.00=2,000万円

●評価額の差額

(8,550万円ー2,000万円)÷(900㎡ー200㎡)≒9.3万円

 

Step3.不整形地の評価額を算出する

Step2で算出した1㎡あたりの評価額を、不整形地の地積で乗算します。

 

課税評価額:9.3万円×630㎡×不整形地補正率0.88≒5,155万円

 

Step4.相続税を算出する

不整形地の課税評価額が求められたので、ここで税率を乗算して相続税を求めます。

※基礎控除額では、法定相続人は1人と想定しています。

 

相続税:(5,155万円ー基礎控除3,600万円)×税率15%=233万円

 

はじめに紹介した整形地として申告した場合の課税額に比べると、172万円もお得になっていると分かります。

 

不整形地評価のポイント

不整形地評価のポイント

不整形地に用いることのできる補正率は、ここで紹介したもの以外にも存在します。用いる補正率によっては課税額の最小化には至らないため、ひとつの計算方法や補正率に固執せず、専門家(税理士など)に任せるのがベストです。

図面そのものを正確に描き、扱えるスキルも欠かせません。ケースによっては、土地家屋調査士に依頼する必要があります。

 

おわりに

形状や接道状況の悪い土地は「不整形地」として扱い、各種補正率を適用することで相続税あるいは贈与税の課税額を下げられます。生前準備や相続開始の早い段階で”補正率がある”という知識を得ておけば、承継する土地の有効活用に向けた対策がとりやすくなります。

節税は資産運用の最初の1ステップです。本記事で紹介した知識を参考に、家庭ごとに最適な相続プランを立ててみましょう。

 

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