コラム 不動産業界 業界動向

【令和2年5月時点】不動産を巡る法改正の状況

投稿日:2020-06-04 更新日:

2018年から2020年にかけて、所有者不明土地や配偶者居住権を巡る大幅な法改正が行われています。改正内容の理解を深めておくことで、お客様の問題解決から新たな事業展開へと結び付けられるでしょう。

ここでは不動産業界人に必須の法改正項目を取り上げ、ざっくりとポイントを押さえながら内容を紹介します。

 

所有者不明土地法の新設

所有者不明土地法の概要

法改正の中心となるのが、相続登記や現地の管理が一切なされていない土地を巡る「所有者不明土地問題」に関するものです。2020年5月時点までの改正内容をまとめると、次のようになります。

【所有者不明土地法のポイント】

●地域福利増進事業による収用が可能に
…都道府県知事の裁定を経て使用権を設定し(上限10年間)、公共事業等の用途で活用できます。

●長期譲渡所得の課税特例が創設される
…地域福利推進事業の事業区域内の土地について、①確知所有者の有する特定所有者不明土地等や、②事業区域の隣地については、長期譲渡所得の税率が14%(2,000万円をこえる部分は15%)に軽減されます。

●数次登記時は登録免許税が免除される
…本来の登記義務者が亡くなっており、その相続人にあたる人が相続登記しようとする場合、登録免許税が免除されます。

●固定資産税賦課時の「所有者」の扱いが変更される
…登記簿上の所有者が死亡している場合、相続登記が未了でも「現に所有している者」(=相続人)に固定資産税賦課のための申告が義務付けられます。また、行政側で一定の調査を尽くしても所有者が明らかにならない場合も、土地の使用者を「所有者」とみなし固定資産税が賦課されます。

今後も所有者不明土地の問題を解消するための法改正が予定されており、2020年中にも相続登記の義務化(登記しない場合の罰則規定)が設けられる予定です。

 

配偶者居住権の新設

相続発生前から居住している不動産について、被相続人の配偶者が遺産分割の内容に左右されず居住を継続する権利を「配偶者居住権」と呼びます。本権利は、2020年4月1日以降に開始される相続(もしくは作成された遺言書)で設定できるようになりました。
配偶者居住権の概要を端的にまとめると、次のようになります。

【配偶者居住権のポイント】

●譲渡や売買はできない
…死亡・合意解除・権利放棄・居住建物の全部所有権の取得等で消滅する

●相続時に課税対象になる
…登記時には「登録免許税」のほか、相続税が賦課される

●合意解除でも課税される
…無償で解除した場合は「贈与税」・有償で解除した場合は「所得税」(総合課税)がそれぞれ賦課される

配偶者居住権、つまり「住む権利」が所有権から切り離せるようになったことは、相続トラブルを防止する上では有利です。現金資産の少ない相続ケースでも、高齢者の居住環境を守りつつ公平に遺産分割できるからです。

一方で、例えば「(遺された配偶者の)老人ホーム入居の際に権利を解除し、所有権者である子が土地建物を有効活用できるようにしたい」というケースではどうでしょうか。贈与税あるいは所得税が子に課せられてしまい、かえって課税額が上昇してしまう可能性があります。
お客様から相続対策について相談された際は、こうした先々のことを含めてご案内する必要があります。

 

建築物省エネ法の改正

建築物省エネ法の改正内容

環境問題への対処の一環として2019年5月に公布された建築物省エネ法の改正では、公布後2年以内に相次いで次の変更が行われます。

●省エネ基準適合義務のある「特定建築物」の対象範囲拡大
省エネ基準への適合が義務化されていたのは、非住宅部分の延べ面積が2,000㎡の大規模特定建築物(オフィスビル等)のみでした。しかし今回の改正によって、300㎡~2,000㎡の中規模特定建築物にも義務が及びます。●建築士による説明義務
改正法施行後に住宅等を新築する場合、設計者(建築士)が「建築物のエネルギー消費性能の評価結果の概要」を作成し、建築主に交付することが義務付けられます。

上記改正点とともに、所管行政庁による省エネ基準への適合確認審査が合理化されます。
特に②の改正点は実務でお客様に説明する可能性が高いと思われるため、知識として留めておくべきでしょう。

 

住宅ローン控除と譲渡所得特例の併用制限の強化

新築とともに旧住宅を売却し住み替えを行う場合、所得税控除として「住宅ローン控除」と「譲渡所得の特別控除」のいずれかが選択できます。実際には新築後3年目には両方とも適用可能になっていたのが、法改正前の状況でした。

【参考】各控除の適用要件(法改正前)

●住宅ローン控除…
「居住日の属する年と翌年・翌々年(後2年間)に譲渡特例等の適用を受けていないこと」

●譲渡所得の特別控除…
「居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であること」

→新築直後に住宅ローン控除を適用し、新築3年目で譲渡所得の特別控除が適用できる

2020年の法改正では、住宅ローン控除において譲渡特例等の適用を理由に除外される年数が「翌年・翌々年」(後2年間)から「翌年・翌々年・翌々々年」(後3年間)に変更されます。
本改正をもって「住宅ローン控除」と「譲渡所得の特別控除」の併用が原則不可になったとも言い換えられます。

 

「優良住宅地の造成等のための軽減税率の特例」の見直し・延長

住宅建て替え・買い替えに関わる税制の改正内容(令和2年5月時点)

一定の優良住宅地の造成を目的として土地を譲渡した場合、譲渡者に対し長期譲渡所得の14.21%(2,000万円超の部分は20.315%)の税率軽減があります。
今回の法改正では、本制度の適用期限を令和4年12月31日までに延長した上で、譲受者が以下いずれかの場合は適用対象から除外されます。

【「優良住宅地の造成等のための軽減税率の特例」から除外された譲受者】

●都市再生特別措置法の認定整備事業計画に係る一定の都市再生整備事業の認定整備事業者

●都市計画区域内において行われる一団の宅地の造成(都市計画法の開発許可又は土地区画整理法の許可を受けて行われるものであること等の要件を満たすものに限る。)を行う者

 

不動産税制の適用期限延長

その他の改正点として、マイホームや山林所得に関する下記の控除の適用期限が2年間延長されます。

●「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等」の適用期限
【改正前】令和1年12月31日→【改正後】令和3年12月31日

「特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等」の適用期限
【改正前】令和1年12月31日→【改正後】令和3年12月31日

●「山林所得に係る森林計画特別控除」の適用期限
【改正前】令和2年12月31日→【改正後】令和4年12月31日

 

おわりに

2020年までに行われた不動産関連の法改正は、税制や省エネ基準に関するものが中心です。改正内容の知識があれば、相続や老朽化建築物の再生について方策を求めるお客様に対する提案力が向上するでしょう。
今後も動きがあれば、随時内容を紹介します。

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