自動車の所有者が亡くなった時は、車両登録名義の変更手続きが必須です。あわせて、車両保険(自賠責保険・任意保険)の契約内容変更も行いましょう。
手間取ることの多い「クルマの相続」について、必要書類や手続きについてを解説します。
目次
まずは「車検証」を探す
自動車の相続が開始されたとき、手始めに行いたいのが車検証(自動車検査証)の捜索です。名義変更手続きにあたって、所有者と使用者の情報や、車両そのものの情報(車名・形式・車体番号)を確認する必要があるからです。
どうしても車検証が見つからない場合は、ナンバープレートに書かれた運輸支局または自動車検査登録事務所に問い合わせ、再発行できないか確認しましょう。
車両相続の必要書類
自動車の名義変更(相続手続き)を行う際は、一般に下記の書類が必要になります。
ただし、相続の状況によっては追加書類が求められる場合があるため、申請先に必ず確認をとりましょう。名義変更手続きに関する相談先は、車検証に記載されています。
【自動車の相続に伴う名義変更手続きの必要書類】
- 自動車検査証(車検証)
- 所定の申請書
- 車両登録名義の変更にかかる手数料(500円/2020年6月現在)
- 遺言書または遺産分割協議書+相続人全員分の印鑑証明書
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 相続人全員分の戸籍謄本(被相続人との関係が分かるもの)
- 相続人全員で署名捺印済みの同意書
- 新所有者の実印(相続人自身で手続きする場合)
- 代理人の実印+委任状(弁護士や別の相続人に任せる場合)
- 新所有者の印鑑証明書
- 自動車保管場所証明書(警察署証明の日から40日以内のもの)
遺言書がない場合は先に「遺産分割協議」を実施する
遺言書がなく被相続人の財産の移転先が指定されていないときは、法定相続人の話し合いによる取り分の決定(=遺産分割協議)を行うよう相続法で定められています。
自動車の相続でも例外ではなく、名義変更の申請の前に家族で集まって次の車両所有者を取り決め、その内容を記した遺産分割協議書を申請書類に添付しなければなりません。
「自分のほかに車を使用する予定の家族はいないから」といって名義変更手続きを進めてしまうと、書類不備で受理されないため要注意です。
自動車の名義変更はどこで行う?
自動車の相続に伴う名義変更手続きでは、最低でも「運輸支局(または軽自動車検査協会)」と「自賠責保険の加入先」の2か所で行わなければなりません。前者は車両登録名義の変更のため、後者は万一の事故時に新しい所有者が補償を受けられるようにするために必要です。
被相続人が任意保険に加入していた場合は、その加入先でも手続きを実施する必要があります。
【車両相続の申請先】
- (普通自動車の場合)管轄の運輸支局
- (軽自動車の場合)軽自動車検査協会
- (全車両共通)自賠責保険の加入先
- (生前加入があった場合)任意保険の加入先
自動車相続のFAQ
自動車の相続では、廃車や譲渡を必要とするケースもあります。また、任意保険の名義変更については、保険料の割引率(ノンフリート等級)の引継ぎ可否が気がかりでしょう。
ここからは、基本的な相続手続きの方法に留まらないさまざまな事例への疑問・不安に答えます。
被相続人から第三者へ直接譲渡(売却)できる?
相続人全員の同意があれば、被相続人から第三者への直接譲渡は可能です。
車両登録名義を変更する際(運輸支局または軽自動車検査協会での手続き時)は、以下の点に注意しましょう。
【第三者への譲渡時のポイント】
- 相続人側で「譲渡証明書」(代行業者もしくは譲渡関係者が作成したもの)を準備する
- 印鑑証明書・車両保管場所証明書を譲受人側で用意する
なお、申請そのものは相続人側・譲受人側のどちらが行っても構いません。ただし、自動車保険の名義変更手続きや売却代金の受け渡しは車両登録名義を変えた後となります。
廃車にしたい場合の手続き方法は?
廃車にしたい場合は、いったん車両登録の名義変更を行ったあとに「一時抹消登録」(一時的に車両使用をやめる手続き)もしくは「永久抹消登録」(解体を前提とする手続き)を車両登録先に対して行います。
手続き時の必要書類は以下の通りです。
【廃車手続き時の必要書類】
- 所定の申請書
- (永久抹消登録の場合)使用済自動車引取証明書
- 廃車にかかる手数料(350円/2020年6月現在)
- 所有者の実印
- 代理人の実印+委任状(代理申請の場合は、実印による押印済の委任状)
- 所有者の印鑑証明書
- ナンバープレート(前後2枚)
上記のほかにも、自動車重量税の還付を受ける場合、口座情報が分かる書類や還付を受ける人の本人確認書類が必要です。
ノンフリート等級も相続できる?
任意保険の「ノンフリート等級」を引き継げるのは、記名被保険者(=保険会社に届け出ている車の使用者)を配偶者もしくは同居親族に変更する場合のみです。
譲渡したり、配偶者以外の別居親族がこれから車を使用しようとする場合は、保険料が高くなって差額の支払いが生じる可能性があります。
おわりに
急に自動車を相続することになっても、慌てずに「車両登録と自動車保険の両方の名義を変える必要がある」とシンプルに考えましょう。
しかし、いざ手続きを始めるとなると、必要書類が多く戸惑いが生じがちです。なかでも遺産分割協議書は相続法の分野になり、専門家の助けがないと作成がうまく進まないこともあるでしょう。
申請先との相談内容や、弁護士や司法書士からのアドバイスを活用しながら進めると安心です。