亡くなった人名義の土地建物に必要な「相続登記」の手続きの際は、最低でも1万円前後の費用がかかります。お金がもったいないという理由で登記せずに放置してしまうケースも見受けられますが、これは到底おすすめできません。
多くの人の気がかりとなる「相続登記の最低費用」の解説に加え、そもそも登記が必要な理由を解説します。
目次
相続登記の費用はどこから生じるのか
相続登記にあたり、申請そのものに手数料等はかかりません。費用が生じる原因となるのは、登記申請書に添付する書類の発行手数料です。添付書類の準備が終わり実際に手続きをとる際には、その後発生する相続税等とは別に「登録免許税」を納付しなければなりません。
そこで最低費用を計算するには、登記申請に必要なもの(添付書類+登録免許税)を個別具体的にまとめられる知識が必要です。
相続登記で必要なもの
●登記申請書
…対象の不動産(亡くなった人の財産に含まれていた土地建物)を指定して、今後は相続人名義にする旨を記載する書面です。書式については、法務局の公式サイトが参考にできるほか、相続の専門家に作成依頼することもできます。
●登記対象の不動産を示す添付書類
…登記事項証明書・固定資産評価証明書など、土地の所在地等の基本情報が分かる書類です。登記申請書への記入内容を確認したり、法務局で登録免許税を計算してもらったりするのに必要です。
●相続関係を示す添付書類
…登記原因は相続(もしくは遺産分割)であるため、被相続人と相続人の身分関係を証明しなければなりません。家族の繋がりが分かる「戸籍謄本」に加え、亡くなったことが分かる住民票(除票・全部事項記載証明書)が必要です。
●遺言書or遺産分割協議書
…相続登記にあたっては「被相続人の意思」もしくは「遺産分割協議での合意内容」を反映させる必要があります。遺言書も遺産分割協議書もない場合は、法定相続分(法律で決められた取り分)に沿った共同登記しか出来ないため、注意しましょう。
●登録免許税
…課税額相当の収入印紙を用意して、あらかじめ登記申請書に貼付しなければなりません。
相続登記にかかる最低費用
それでは具体的に、相続登記にはどんな費用がかかるのでしょうか。ここでは「専門家に依頼せず自力で手続きするもの」と考えて、最低限かかる①添付書類の収集費用と②登録免許税の2点を紹介します。
※本項で紹介するのはあくまでも目安です。詳しくは管轄役場または法務局にお問い合わせ下さい。
添付書類の収集費用
登記申請書を作成する段階でまず必要となる登記事項証明書・固定資産評価証明書は、登記1件あたり以下の発行手数料がかかります。
登記事項証明書:600円
固定資産評価証明書:400円
被相続人と相続人の身分関係を証明する書類は、1通あたり以下の発行費用がかかります。
戸籍謄本については「1人につき1通」とは限りません。改製原戸籍・除票など1人につき複数の戸籍が存在するケースがあり、被相続人に関しては役場にある全ての戸籍謄本が必要です。状況により想定以上に費用がかさんでしまうことがあるため、注意しましょう。
住民票:300円
戸籍謄本:450円~750円
印鑑登録証明書※:300円
登録免許税
登記申請書に添付する「登録免許税」は、申請者の手で以下のように計算を行います。
≒ 課税標準額 × 1000分の4(0.4%)
※課税標準額…固定資産税評価証明書(相続登記の添付書類のひとつ)に記載されている評価額
※算出結果は1,000円未満の端数切捨て
被相続人自身が登記しないまま放置していた土地など、数次登記(数世代前からの相続登記を必要とするケース)については、登録免許税の免除措置(リンク)も利用できます。
心当たりがある場合は、専門家に相談すると良いでしょう。
そもそもなぜ相続登記は必要?
相続登記とは、単なる名義変更手続きではありません。登記によって生じる「第三者への対抗要件」(民法第177条)こそが手続きの目的です。
ここで法律用語として出てきた”対抗”は「所有権の主張」を意味しています。一方の”第三者”とは、売買取引の相手方から無断占有者まで、不動産の所有者本人以外のあらゆる立場を示しています。
つまり、承継した不動産を売却して現金を得ようとしたり、近隣住民等との占有トラブルを解決したりする上で、登記による「対抗要件の具備」が前提となるのです。
登記しないとどうなるのか
登記費用がもったいない等の理由で、家族から受け継いだ土地建物の相続登記を行わないケースが相次いでいます。
不動産の権利関係はそもそも容易に目に見えるものではありませんし、極端に表現すれば「名札がかかっていれば自分のものだと言える」でしょう。実体として相続人がその土地建物の権利を支配しているのだから、登記は必要ないという考え方も確かに存在します。
しかし、時とともに家族の事情も土地建物の数も変化します。居住も管理も難しくなってから十分な時間が経てば、その不動産を自分の物だと勝手に主張する無断占有者が現れないとも限りません。かといって「管理できない不動産は売却したい」と思っても、登記名義人でない人との取引に応じてくれる買主はいないのが現実です。
登記されていない不動産は、預貯金や家財類なら”当たり前”である「自分の利益のための有効活用」が一切できません。所有者が亡くなったときは、必ず登記しましょう。
相続登記は専門家に相談を
本記事で触れた通り、相続登記時の必要書類は多岐にわたります。費用よりむしろ書類収集等にかかる手間のほうが負担となるでしょう。
もし準備にミスがあると、ますます出費がかさむことになります。出来るだけ専門家に手続きを任せることをおすすめします。